4時間ポケットに入れていただけで…モバイルバッテリーで充電中のスマートフォンによる3度熱傷
2020年から、リチウム電池内臓充電器による火災、熱傷などのトラブルが頻発し、それらの商品の流通量の増加ととも事故発生報告件数も増加してきています。
2025年10月2日、消費者庁もリチウムイオン電池使用製品に関連した消費者への注意喚起を報告し事故情報、使用する際の注意などを発表しています。
今回は、当院でスマートフォンによる重症熱傷の患者さんが受診したので、皆さんへの啓蒙も含めて報告します。
これは何の傷跡でしょうか?

20代の男性、飲酒後に寝てしまい気が付いたら左殿部~大腿後面の違和感を感じたため当院を受診しました。
一見するとなんの傷かわかりずらく、受診時は本人も原因に心当たりがないとのことでした。
言われれば携帯電話の形であるとわかります。

徐々に進行する皮膚壊死
受診した当初は深いⅡ度熱傷(真皮深層までの熱による損傷を起こした熱傷)と考えていました。受傷部位の痛みも有るか、無いか程度で白色の水疱底です。
しかし、状況が急速に悪化していきます。
| 受傷9日目 | 受傷22日目 |
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9日目の時点では受傷部に痛みが全く無くⅢ度熱傷(皮膚全層、あるいはそれ以上の深度で熱による損傷を起こした熱傷)であると診断しました。皮膚が灰白色になりかなり深いところ(脂肪の浅い部分)まで熱傷が及んでいると判断しました。その後も皮膚症状が悪化して黒色の壊死した病変になってしまいました。
| 受傷36日目 | 受傷54日目 |
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ご本人の希望もあり、外用薬で治療していましたが、やはり改善が見込めないので植皮を含めた治療の相談ということで入院加療も行える施設へ転院していただきました。
その後、この傷を自然治癒させると、熱傷の傷跡が収縮して、運動障害なども出る可能性があるため、入院して全身麻酔下に植皮術を行うこととなりました。
スマホで熱傷になるの?
今回、スマートフォンを左殿部のポケットに4時間入れておいただけで、このような重症の熱傷になるのかが、疑問でした。そのため、詳細に受傷日のお話を伺ったところ、マグネット接着式モバイルバッテリーを付け充電中の状態であったことが判明しました。※アプリなどは起動していなかったようです。
東京都生活文化局消費生活部: 平成27年度調査報告書 スマートフォンの安全な使用に関する調査報告書によるとアプリの起動中や充電している間は表面温度が50℃近くまで上昇するが確認されています。そのため、アプリ起動中や充電中は熱傷を起こす可能性が高くなります。
モバイルバッテリーに問題があるのでは?
通常、モバイルバッテリーを購入する際に、注意するポイントとして以下のようなことが指摘されています。
- 『他の製品と比べて極端に安価ではないか』
- 『信頼できる販売元かどうか(国内の連絡先が存在するか)』
- 『「PSE等のPSマーク」の近くに事業者名があるか(PSE規則対象製品に限る)』
今回は、全ての条件に当てはまっており、一般的には安全と判断できるモバイルバッテリーでスマートフォンを充電中に生じた熱傷です。今回使用していたモバイルバッテリーがリコールの対象商品なのかとも考え、検索してみましたが、今のところ、この機種は問題ないとされています。問題ないとされている機種でも4時間の接触で、この程度の熱傷を生じうる危険性がある事がわかりました。
まとめ 日常に潜む重症熱傷 皮膚科専門医からの警告
今回は、モバイルバッテリーで充電中のスマートフォンによる重症熱傷の患者さんを紹介しました。
この患者さんは、飲酒していたとはいえ、若い健康な男性で、特に持病などもない方です。言い換えれば、これは誰にでも起こり得ると考えれるでしょう。
モバイルバッテリーで充電中のスマートフォンが数時間皮膚に接触することも、しばしばある事でしょう。
その結果、このような重症の熱傷を起こし、入院し植皮術になるのは、皮膚疾患である熱傷の話というよりも、社会的問題でもあると思います。
皆さんも、充電中のスマートフォンの皮膚への接触は十分に気を付けてください…としか言えないですね。
水道橋駅前こばやし皮フ科形成外科 院長 小林光 医学博士・皮膚科専門医・美容外科専門医




